相続手続き

相続税の納付方法は?支払い手続きと注意点をわかりやすく解説

相続手続き

相続税の納付方法は、現金だけでなく、クレジットカードやコンビニエンスストアでの納付も可能になり、選択肢が増えています。ただし、各納付方法にはメリット・デメリットがあるため、事前に確認が必要です。
本記事では、相続税の支払い手続きや注意点について詳しく解説します。

相続税の納付方法とメリット・デメリット

相続税の納付方法は複数あり、それぞれにメリットとデメリットがあります。自身に合った方法を選び、期限内に納付しましょう。

主な納付方法

  • 金融機関や郵便局で納付
  • 税務署で納付
  • クレジットカードで納付
  • コンビニエンスストアで納付
  • ダイレクト納付
  • インターネットバンキングで納付
  • キャッシュレス決済

金融機関や郵便局で納付

最も一般的な方法で、金融機関や郵便局の窓口で納付できます。

メリット

  • 直接窓口で対応してもらえるため安心
  • 預金通帳があれば支払い可能
  • 手数料がかからない

デメリット

  • 営業時間内に行く必要がある
  • 窓口が混雑していると時間がかか

税務署で納付

税務署の窓口で、現金と納付書を持参すれば納付可能です。

メリット

  • 申告と同時に納付できる
  • 手続きに不明点があればその場で確認できる

デメリット

  • 申告を行った税務署でしか納付できない
  • 相続税額が高額な場合、多額の現金を持ち歩くリスクがある
  • ATMの引き出し限度額により、事前に現金を準備する必要がある

クレジットカードで納付

「国税クレジットカードお支払サイト」を利用して納付できます。

メリット

  • 24時間いつでも手続き可能(金融機関や税務署に行く必要なし)
  • クレジットカードのポイントが付与される可能性がある

デメリット

  • 決済手数料がかかる(納税額によって変動)
  • 1回の納付上限は1,000万円未満(超える場合は複数回の手続きが必要)
  • クレジットカードの利用限度額に注意(場合によっては事前の引き上げ手続きが必要)

コンビニエンスストアで納付

QRコードを利用してコンビニで納付できます。

メリット

  • 24時間納付可能(コンビニの営業時間内であればいつでも対応可)
  • 手数料がかからない
  • スマホやパソコンでQRコードを作成し、そのまま納付できる

デメリット

  • 納付額の上限が30万円まで(超える場合は他の方法を利用する必要あり)
  • 対応していないコンビニもあるため、事前確認が必要

ダイレクト納付

電子申告後、指定した口座から自動引き落としで納付する方法。

メリット

  • 手続きが簡単で自宅で完結
  • 金融機関の営業時間を気にせず納付できる

デメリット

  • 事前に税務署で利用開始手続きを行う必要がある
  • 一度きりの相続税納付には向かない

インターネットバンキングで納付

電子申告後、金融機関のインターネットバンキングを利用して納付する方法。

メリット

  • 金融機関の営業時間に関係なく納付可能
  • 事前の届出が不要(ダイレクト納付より手続きが簡単)

デメリット

  • インターネットバンキングの利用登録が必要
  • 一部の金融機関では対応していない場合がある

キャッシュレス決済

スマホアプリを利用した電子マネー決済で納付する方法。

メリット

手数料不要
スマホで手続きが完結する

デメリット

納付額の上限が30万円まで
利用するアプリによって対応が異なるため、事前確認が必要

相続税の納付方法は多様化しています。それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、自身の状況に合った方法を選び、期限内に納付しましょう。

相続税の納付ルールとは

相続税の納付には、どの方法を選んでも共通するルールがあります。これらの基本事項を押さえ、期限内に適切に納付しましょう。

相続税の納付期限は10カ月以内

相続税の申告と納付は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内」に行う必要があります。

申告先:被相続人の住所地を管轄する税務署
納付期限:被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内

例えば、1月1日に被相続人が亡くなった場合、相続税の申告・納付期限は11月1日となります。(期限日が土日祝日の場合は、翌開庁日が期限)

現金納付が原則

相続税の納付は、現金による一括払いが基本です。
ただし、納税資金が不足している場合には、以下の方法での納付も認められています。

  • 延納:年賦払いで分割納付する方法
  • 物納:不動産や株式などの相続財産で納税する方法(一定の条件あり)

相続人本人が納める

相続税の申告を税理士に依頼している場合でも、納税手続きは相続人自身が行う必要があります。
納付書は税務署から送られてこないため、税理士に作成してもらうか、相続人自身で用意する必要があります。
各相続人がそれぞれ自分の納税額を納付する仕組みになっており、他の相続人が肩代わりすると「贈与」とみなされる可能性があります。
納付期限を過ぎると延滞税が発生するため、期限内に納付することが重要です。
相続税の納付ルールを理解し、計画的に納税準備を進めましょう。

相続税の納付の流れ

相続税の納付には、いくつかの重要なステップがあります。期限内に正しく手続きを進めるために、相続発生から納税までの流れを把握しておきましょう。

相続の開始

相続税の申告期限と納税期限の基準となるのは、「相続の開始」=被相続人の死亡です。
被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に申告・納付する必要があります。

相続財産・相続人の調査と遺言書の確認

相続が発生したら、まず相続財産と相続人の確認を行います。

  • 財産の調査(不動産・預貯金・有価証券など)
  • 相続人の確認(被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、相続人を確定)
  • 遺言書の捜索(自宅や法務局で保管されているか確認)

遺産分割協議の実施

遺言書がない場合、相続人同士で遺産の分割方法を決定する必要があります。

  • 遺産分割協議を行い、誰がどの財産をどのような割合で相続するか話し合い
  • 協議内容を「遺産分割協議書」にまとめ、相続人全員が署名・実印で押印

相続税の計算と申告書の作成

遺産の分割方針が確定したら、相続税額を計算し、申告書を作成します。

  • 相続税の計算:特例や控除を適用し、納税額を算出
  • 申告書の作成:必要事項を記入し、提出の準備を進める

これらの手続きを期限内に完了し、相続税を納付することで、延滞税やペナルティを回避できます。

相続税の納付に関する注意点

相続税の納付方法が多様化し、便利になった一方で、注意すべきポイントもあります。特に、相続人が現金で一括納税できない場合には、問題が発生する可能性が高いため、事前に対策を考えておくことが重要です。

連帯納付義務に注意

相続税は、各相続人が自分の負担分を納めるのが基本ですが、「連帯納付義務」があるため、納税しないと他の相続人にも影響が及ぶ可能性があります。

  • まずは、納税義務者本人に未納通知や督促状が送られる
  • それでも未納の場合、ほかの相続人に納税を求められることがある

肩代わりは贈与税の対象になる

相続人の中に納税資金が足りない人がいる場合、ほかの相続人が肩代わりすると「みなし贈与」として贈与税が発生する可能性があります。

  • 贈与税の課税対象になると、結果的に納税額が増えてしまう
  • 肩代わりをする場合は、金銭の貸し借りの形を取るなどの対策が必要

税務上、明確に返済の意思があることを証明できる契約書などを作成するのが望ましいです。

納期限を過ぎると延滞税が発生

相続税の申告が期限内に完了していても、納税が遅れると延滞税がかかります。

  • 延滞税は日数に応じて増加するため、早めの対応が必要
  • 申告と納税はセットで考え、期限前に納税資金を確保しておく

納税資金がない場合は「延納」や「物納」を検討

相続税は原則として現金で一括納付ですが、資金が不足している場合は、以下の方法を利用できます。

  • 延納(分割払い):一定の条件を満たせば、最長20年の分割払いが可能
  • 物納(不動産や株式で納税):厳しい条件をクリアすれば、現金ではなく相続財産で納付できる

ただし、延納や物納は事前の審査があり、必要な書類を早めに準備する必要があるため、検討する場合は早めに専門家に相談しましょう。

おわりに

相続税の申告・納付期限である10カ月間は、葬儀や役所手続きと並行して進めなければならず、想像以上に時間が限られています。特に、仕事をしている方にとっては、スムーズに進めるのが難しい場合もあります。
相続税は高額になることが多く、現金での一括納付が難しいケースも珍しくありません。納税資金の準備には時間がかかるため、事前に対策を講じることが重要です。

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是非、ご利用ください。

この記事を書いた人
白井 佑弥 公認会計士・税理士

大学卒業後、有限責任監査法人トーマツで約7年勤務したのち、2017年に独立開業。
税理士 / 公認会計士
白井佑弥公認会計士・税理士事務所 代表
日本公認会計士協会東京会 業務委員会委員
経済産業省認定 経営革新等支援機関

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