法定相続情報一覧図とは
法定相続情報一覧図は、被相続人と相続人との関係を一覧にした書類です。つまり、家系図のようなもので、相続関係を1枚にまとめ、それを法務局の登記官が証明したものです。
法定相続情報一覧図が使える手続き
法定相続情報一覧図は、さまざまな相続手続きに利用できる便利な書類です。具体的には、以下の手続きで活用されています。
・被相続人名義の不動産登記や有価証券の名義変更
・自動車の名義変更
・預金の払い戻し
・相続税の申告
・遺族年金、未支給年金等の年金手続き
また、一部の民間会社の保険請求でも使用できる場合があります。
なぜ法定相続情報一覧図を取得するか?
法定相続情報一覧図を取得するメリットは、相続に関する手続きを大幅に簡略化できることです。この一覧図は、法務局で認証された写しが公的証明書として発行されるため、相続に関連するさまざまな手続きで利用可能です。これにより、戸籍謄本を何通も準備する手間が省け、手続きの効率が上がり、時間も節約できます。
ただし、このメリットを特に感じるのは、手続きが複雑で書類の提出先が多い方に限られます。例えば、名義変更が必要ない財産(現金や動産など)だけを相続する場合や、名義変更や解約を行う銀行が1行しかない場合、法定相続情報一覧図を取得するメリットは少ないかもしれません。また、相続放棄や、遺産分割協議で遺産を相続しない方も、その後の手続きが不要となるため、一覧図を取得するメリットはありません。
一方で、デメリットとしては、一覧図の作成(申請書類の準備、作成、申し出)に手間がかかることが挙げられます。
法定相続情報一覧図を取得できる人
法定相続情報一覧図は、誰でも取得できるわけではなく、以下の人に限られます。
・被相続人の相続人
・相続人から委任を受けた民法上の親族
・相続人から委任を受けた弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、行政書士、海事代理士、弁理士
なお、法定相続情報一覧図は戸籍情報をもとに作成されるため、被相続人や相続人が日本国籍を持っていない場合、この制度を利用することはできません。
法定相続情報一覧図の取得費用、交付期間
すべて無料で費用はかかりません。手続きに必要な範囲であれば、何枚取得しても無料です。(郵送で申出や取得を行う場合は、切手代はかかります。)
ただし、一覧図の取得に必要な戸籍謄本などの書類を集めるための費用は別途発生するため、注意が必要です。
申出から交付までの期間は、一般的に1週間から10日ほどかかりますが、翌日に交付されることもあります。具体的な交付期間については、管轄の法務局に確認することをお勧めします。
法定相続情報一覧図の有効期限
法定相続情報一覧図自体には有効期限はありません。ただし、民間の会社や銀行で有効期限が設けられている場合がありますので、具体的な期限については各機関に確認する必要があります。
また、法務局での一覧図の保管期間は、申出日の翌年から起算して5年間です。この間であれば、何度でも無料で再発行を受けることができます。ただし、保管期間を過ぎると再発行ができなくなるため、注意が必要です。
法定相続情報一覧図の取得までの流れ
必要書類を準備する
以下の「必ず用意する書類」と「必要となる可能性がある書類」を準備します。
必ず用意する書類
・被相続人の戸籍謄本および除籍謄本(被相続人の本籍地の市区町村役場で取得)
・被相続人の住民票の除票(被相続人の最後の住所地の市区町村役場で取得)
・各相続人の戸籍謄本または抄本(相続人の本籍地の市区町村役場で取得)
・申出人の氏名、住所が確認できる公的書類(運転免許証・マイナンバーカード・住民票の写しなど)
必要となる可能性がある書類
・各相続人の住民票の写し(一覧図に相続人の住所を記載する場合)
・委任状(申出を委任する場合)
・申出人と代理人が親族関係にあることを証明する戸籍謄本(親族が代理の場合)
・資格者代理人団体所定の身分証明書の写しなど(資格者代理人が代理の場合)
・被相続人の戸籍の附票(住民票の除票が取得できない場合)
戸籍法の一部改正により、2024年3月1日以降、戸籍謄本等の広域交付(最寄りの市区町村窓口での請求)が可能になりました。
なお、戸籍謄本などの書類は返却されますが、本人確認書類の写しなどは返却されません。
法定相続情報一覧図を作成する
被相続人の戸籍や法務局の記載例をもとに、自分で一覧図を作成します。
作成時の注意点は以下のとおりです。
・用紙はA4サイズの縦向きで、下部5cmは空白にする(認証文が挿入されるため)
・手書きでもパソコン入力でも可(手書きの場合は明瞭に記載)
・被相続人との続柄は、戸籍に記載されたとおりに記載する
・相続人の住所記載は任意(記載すると、相続人の住民票の写しが不要になる場合もある)
また、法務局のサイトには、さまざまな相続パターンに対応した記載例が掲載されています。テンプレートのダウンロードも可能です。
【参考】法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」
申請書を記入して登記所へ申出する
申請書に必要事項を記入し、準備した書類と作成した一覧図を持参して申出を行いましょう。申出する登記所は、次の管轄登記所から選べます。
・被相続人の本籍地(亡くなった時点での本籍地)
・被相続人の最後の住所地
・申出人の住所地
・被相続人名義の不動産の所在地
管轄の登記所に行くことができない場合には、郵送での申出も可能です。その際は、郵送の切手代や返信用封筒の用意が必要です。
おわりに: 手続きが多い方は法定相続情報一覧図を取得すべき!
法定相続情報一覧図は、被相続人と相続人の関係を一覧にした書類です。
この書類を利用することで、相続に関する手続きで従来必要だった戸籍謄本の束を何度も用意して提出する必要がなくなり、手続きが大幅に簡略化されます。
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